◆過去の展覧会

Spirit of Tea
KAIHATU YOSHIAKI, ISOZAKI MICHIYOSHI
 2002年5月16日(木)〜6月8日(土)

Opening Reception: Thursday, May 16, 6-8PM

 イセカルチュラルファンデーションは、この度ニューヨークにて活躍するキュレーター山村みどり氏を招き、企画展覧会'SpiritOfTea'を開催致します。今展覧会では、コミュニケーションをアートの媒体とする2人のアーティスト、 開発好明と 磯崎道佳を紹介いたします。

 現、ポーラ財団奨学金で留学をしているアーティストの開発好明は90年代中頃から、地域社会に根ざしたコミュニケーションを作品作りの核とした制作活動を行っています。このような作品作りの切っ掛けとなったのは、1995年から1996年にかけての365日間、彼がNHK衛星テレビのレギュラーを勤めて、日本全国365箇所の様々な人達の家にあらかじめ発送した自作の、等身大の箱型の作品を毎日訪ねてゆくという番組、『365大作戦』を制作したことに起因します。彼は、この作品というか 番組を通して、従来芸術作品を見せる「場」を美術館のような近代主義が作り出した歴史的な現場から、テレビというポピュラー・カルチャーの「場」、メディアへ転換してしまいました。他にもこの作品にはサブヴァーシブな一面があります。テレビのようなマスメディアでは、通常ある種の均質化された情報が流れがちですが、これをローカルなコミュニケーションに落とし込むことによって、開発は、社会における権威的な立場や情報といったものを逆転しています。

 このように、美術という規制の枠組みの中に囚われない作品作りをする開発は、1990年代 日本現代美術のセカンド・ゼネレーションを代表する作家と呼べるのではないでしょうか。日本の90年代前半は銀ブラ・アートに代表される、銀座の貸し画廊制度や美術館のようなエスタブリッシュされた芸術空間に不信感を持った作家やキュレーター達が、自ら美術イヴェントを企画して、街中へ繰り出した時代でした。また、日本の外務省がアジア近隣諸国と、文化を通した外交を促進するために、国際交流基金アセアン・カルチュラル・センターを設立して日本に積極的にアジア近隣諸国の現代美術を紹介した時期でもありました。アジア諸国でも、特に植民地主義を体験した国々は、第2次世界大戦後の独立を期として、コロニアリズムで失われたアイデンティティーを回復するため、積極的に古くからの地域の伝統にインスピレーションを得た、祭りや儀式などを取り入れたパフォーマンスや地域社会の人々と共に作り上げるワークショップ型の作品制作などを行い、欧米型の作品とは異なる美術作品のモデルを日本へ紹介して、日本の若いアーティスト達の刺激となりました。このように、日本の90年代は、80年代に銀座の貸し画廊を中心に生まれた、形のあるフォーマリズム系の美術とは対照的に美術の在り方が多様化した時代となりました。

 この展覧会のコンセプトは、室町時代に成熟して現代に至る茶道の精神に基づいています。茶道では、主人と客人達との間に交わされる会話や、茶会のために整えられた道具類や装飾品を通して日常生活の中の精神的な部分と物質的な部分が混ざり合い、その中から新しい現実を作り出すという特色を持っています。また、禅と神道の精神に基づき、会話や「場」の設営をとおして人間の内的な質を育んだり、四季折々の自然を参加する者が楽しむという側面もあります。このように人々の精神を育み、交流を通してある時代性を作り上げて行くという茶道の特色はコミュニケーション・アートの原点とも言えるのではないでしょうか。会期中はもてなしということで、オープニングのイヴェントとしてアーティスト自らがバーテンダーに扮して「味覚」もアートの領域と見なして自作のカクテルを披露する『髑髏カフェ』と、バッド・DJ・ナイト。また、美しい5月の自然を参加者の方達に楽しんで頂くための2回のお茶会と、クロージング・イヴェント、この日の為に日本から来米予定のノーイズバンド、ロー・テックの演奏会などを予定しています。

 この他に‘スピリット・オブ・ティー’では現在アジアン・カルチュラル・カウンシルのグラントでニューヨークへ留学している、コミュニケーションを主軸としたアートを制作するアーティスト、磯崎道佳のワークショップをフィーチャー致します。磯崎は人間の持つ子供のような純真さを、他者とのコミュニケーションを開くための糸口にして、95年頃から参加者とともに作品を作り、そのプロセスの中で人の中に存在する創造性を刺激するという、プロセス重視の作品制作を行っています。会期中会場内では、全長5メートル以上もあるかと思われる、磯崎が二日間かけて子供たちと作った、ごみ袋から成る人形の制作風景、『あちらこちらの島作りそちらはどうですか?』のビデオも上演する予定です。

 開発は、この展覧会から派生するコミュニケーションを通して、人々と一緒に「幸せ」という事を考えたいそうです。今回展示する作品の中には、グラウンド・ゼロの掃除をして集められたホコリのインスタレーションの『涙の池』や、ニューヨークの街角から集めたゴミに出された発泡スチロールを集めて作った茶室、『発泡苑』など、ニューヨークにゆかりのある作品が展示されます。展覧会に集まる多くの人達との作品やアーティストを通してのコミュニケーションを通して、9月11日の惨事を超える、新たな時代の精神が生まれることを期待しています。

●リスティング インフォメーション
展覧会タイトル:Spirit of Tea (スピリット・オブ・ティー)
ワークショップ及び展示作品出点作家:KAIHATSU Yoshiaki (開発好明)
イベント参加作家:ISOZAKI Michiyoshi (磯崎道佳)Low-Tec (ロー・テック)
展覧会会期:2002年5月16日から6月8日まで。
オープニングレセプション:5月16日木曜日 6 ミ 8 PM
展覧会キュレーター:Midori Yamamura (山村みどり)

●展覧会会場:
Ise Cultural Foundation Gallery (イセ・カルチュラル・ファンデーション・ギャラリー)
555 Broadway, New York, NY 10012
Telephone: 212-925-1649 Fax: 212-226-9362
Gallery hours: Tuesday - Saturday, 12 Noon - 6 PM
iseart@earthlink.net URL: www.isefoundation.org

●展示作品
開発好明
ギャラリー内展示作品
発泡苑: 発泡スチロール製のティー・ハウス
涙の池(ホコリのインスタレーション):グラウンド・ゼロを掃除したゴミの作品
曇り空: 日本全国の曇り空を全国に人達に撮影してもらった作品
千羽鶴: 折り紙の千羽鶴
ビデオ・プレゼンテーション
365大作戦
The Tea Ceremony, 2002

磯崎道佳
ワークショップ風景
あちらこちらの島作りそちらはどうですか?

●イヴェント・スケジュール:
2002年5月16日(木) 6:00-8:00P.M.
開発好明によるオープニングパフォーマンス:髑髏カフェとバッド・DJ・ナイト

2002年5月24日(金)と6月1日(土) 1:00-4:00P.M.
開発好明によるアートワークショップ:お茶会

2002年6月8日 1:00-3:00P.M.
磯崎道佳 によるアートワークショップ:パラシュートとマキオ

2002年6月8日 6:00―7:00P.M.
クロージング・パーティー:ノーイズ・ライブ by ロー・テック



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